$og_type = 'article'; $og_image = !empty($article['eyecatch']['url']) ? $article['eyecatch']['url'] . '?w=1200&h=630&fit=crop' : ''; $og_published_time = $article['published_date'] ?? $article['publishedAt'] ?? ''; 採用広報ではなく、働く意味を掘り起こすインタビュー設計とは何か | TRANSIT DESIGN INC.

採用広報ではなく、働く意味を掘り起こすインタビュー設計とは何か

社員インタビューを増やしても採用で届かないのは、話し手ではなく問いの設計に原因があるかもしれません。働く意味がどこで立ち上がるのかを掘り起こし、候補者の判断材料になる言葉へ変えるインタビュー設計の考え方を整理します。

CONTEXT

社員インタビューを増やしている。採用ページにも載せている。現場の声を発信する重要性も理解している。それでも、なぜか似たような記事ばかりになる。読まれても、その会社らしさの輪郭が伝わり切らない。応募の質も、面談での手応えも、思ったほど変わらない。そんな違和感を抱えている会社は少なくありません。

このとき、多くの会社は、話し手を見直そうとします。若手を出した方がよいのではないか。活躍している社員に変えた方がよいのではないか。部署や職種のバランスを広げた方がよいのではないか。もちろん、それも無意味ではありません。ただ、それでも語りが似てしまうのだとしたら、見直すべきなのは誰に話してもらうかではなく、何をどう聞いているかかもしれません。

採用広報におけるインタビューは、整ったコメントを集める場になりやすいものです。「入社理由」「仕事のやりがい」「会社の魅力」「今後の目標」といった問いは使いやすく、記事にもまとめやすいです。企業がこうした問いを置きやすいのは、答えが整理されやすく、外向きのコンテンツとしても編集しやすいからでもあります。ただ、その問いだけで見えてくるのは、言いやすく整えやすい言葉に留まりやすい。候補者が本当に知りたい、その会社で働く意味の輪郭までは、なかなか立ち上がってきません。

候補者が知りたいのは、会社として何を伝えたいかだけではありません。この会社で働くことが、自分にとってどんな意味を持ちそうか。その判断材料です。だからこそ、採用広報におけるインタビューは、魅力をきれいに言語化するためのものではなく、現場の実感の中から、働く意味がどこで立ち上がっているのかを見つけるためのものである必要があります。

私たちは、こうした採用のあり方をナラティブ採用と捉えています。制度や条件を並べるのではなく、組織の中にある実感を掘り起こし、合う人に届く文脈へ変えていく考え方です。だからこそ、インタビュー設計もまた、コンテンツ制作のためではなく、働く意味を見つけるための設計である必要があります。

採用広報のインタビューが薄くなりやすいのは、答えやすい問いから始めてしまうから

社員インタビューが似た内容になりやすいのには理由があります。多くの場合、聞いている問いが似ているからです。

なぜ入社したのですか。仕事のやりがいは何ですか。会社の魅力はどこですか。今後どんな挑戦をしたいですか。これらの問いは間違っているわけではありませんし、答える側にとっても答えやすいものです。ただ、その分、返ってくる言葉も似やすくなります。

「人がいい」「成長できる」「裁量がある」「挑戦できる」。こうした言葉は多くの会社で語られます。だからこそ、それだけではその会社らしさの輪郭は立ち上がりません。

問題は、話し手の個性が足りないことではありません。問いが、表層の評価を引き出すところで止まってしまっていることです。働く意味は、「この会社はよい会社です」という評価の中にあるのではなく、どんな場面で、どんな関係性や判断の中で、その人にとって意味が立ち上がったのかという具体の中にあります。

インタビューで掘り起こしたいのは、「魅力」より先にある実感である

採用広報では、どうしても「魅力を伝える」ことが目的になりがちです。その結果、インタビューでも「うちのよさを話してください」という前提が、見えないかたちで入り込みやすくなります。

ただ、本当に必要なのは、魅力の言語化より先にある実感の把握です。

たとえば、「人がいい会社」と言われたときに知りたいのは、その評価ではありません。忙しい時期に誰がどう支えてくれたのか。うまくいかなかったとき、どんな関わり方があったのか。役割が曖昧だったとき、誰が何を整理してくれたのか。そうした場面まで降りていってはじめて、「人がいい」という言葉は意味を持ちます。

「成長できる」も同じです。何を通じてそう感じたのか。任せてもらえたことなのか、振り返りの機会があったことなのか、失敗しても見放されなかったことなのか。その中身が見えなければ、候補者にとっては判断材料になりません。

つまり、インタビューで掘り起こしたいのは、評価としての魅力ではなく、実感としての出来事です。その出来事の中に、その会社で働く意味の輪郭があります。

よいインタビューは、「何がよかったか」より「どこで意味が立ち上がったか」を聞いている

インタビュー設計で大切なのは、答えを急がないことです。「会社の魅力は何ですか」と聞けば、たしかに答えは返ってきます。ただ、その答えが候補者に届く言葉になるとは限りません。

一方で、「しんどかった時期に、何が支えになりましたか」「この会社らしいと感じたのは、どんな場面でしたか」「ここで働き続ける理由が見えたのは、どんな出来事のあとでしたか」といった問いは、すぐに整った答えが返るとは限りません。その代わり、実感に触れやすくなります。

働く意味は、最初から言語化されているとは限りません。だからこそ、インタビューでは、本人の中にまだ整理され切っていない感覚に触れていく必要があります。

何がよかったかと聞くと、評価が返ってきます。どこで意味が立ち上がったかと聞くと、場面が返ってきます。採用広報で必要なのは、前者だけではなく、後者です。なぜなら候補者が知りたいのは、抽象的な満足度ではなく、その会社で働くことがどのような経験として立ち上がるのかだからです。

働く意味を掘り起こすインタビュー設計が採用に効くのは、会社が言いたいことではなく、候補者が判断材料として受け取れる実感を言葉にできるからです。

「入社理由」だけではなく、「辞めなかった理由」や「迷った場面」まで聞く

採用広報のインタビューでは、「なぜ入社したのか」がよく聞かれます。もちろん、それも大切です。その会社がどのように見えていたのか、何に期待していたのかがわかるからです。

ただ、それだけでは入口の話に留まりやすくなります。採用で本当に参考になるのは、入社後の実感が見える問いです。

たとえば、辞めようと思ったことはあったのか。迷った時期はあったのか。そのとき何が踏みとどまる理由になったのか。想像と違ったことがあったとき、何が関係をつなぎ直したのか。そうした問いを通して見えてくるのは、入社前の期待ではなく、入社後の実感です。

この入社後の実感にこそ、その会社らしさが出ます。採用広報のインタビューが薄くなるのは、ポジティブな話だけを整えて聞こうとするからでもあります。迷い、揺れ、しんどさを含めて聞くことで、はじめて残る理由や働く意味が見えてきます。

インタビューは、話をうまくまとめる場ではなく、文脈を見つける場である

採用広報の現場では、インタビューの段階から「記事としてまとまりやすい答え」を求めてしまうことがあります。たとえば、見出しにしやすい言葉や、短く引用しやすいコメントを早い段階で取りにいこうとすることです。

ただ、それを急ぎすぎると、話の奥にある文脈を取りこぼしやすくなります。

同じ「成長できる」という言葉でも、そこにある背景は人によって違います。挑戦を任せられたことかもしれません。困ったときに相談しやすかったことかもしれません。顧客と向き合う中で、自分の役割が見えたことかもしれません。

重要なのは、言葉そのものではなく、その言葉がどんな前提の中で立ち上がっているかです。インタビューは、その文脈を見つけるための場です。話をうまく整えるのは、その後でも遅くありません。先に必要なのは、実感の背後にある意味のかたちをつかむことです。

問いを変えたとき、社員の語りの質が変わりはじめた

ある企業では、採用広報として定期的に社員インタビューを実施していました。入社理由、仕事のやりがい、会社の魅力、今後の目標といった定番の質問を中心に構成し、記事としても整ったかたちに仕上がっていました。ただ、読みやすくはあるものの、どの記事を見ても印象が似てしまい、その会社らしさの輪郭が外に伝わり切っていませんでした。

そこで見直したのは、話し手ではなく、問いの設計でした。「なぜ入社したのか」だけではなく、「入社後に想像と違ったことは何だったか」「しんどかった時期に、何が支えになったのか」「この会社らしいと感じたのは、どんな出来事のときだったか」といった問いを加え、答えやすい評価ではなく、場面や関係性に降りていく聞き方へ変えていきました。

すると、これまで「人がいい」「裁量がある」「成長できる」と整理されていた言葉の内側に、具体的な実感が現れはじめました。忙しい時期でも一人にしない関わり方があったこと。任せるだけでなく、振り返りの時間をきちんと取っていたこと。顧客に向き合う中で、自分の役割がどこにあるのかが見えてきたこと。そうした実感が見えてくると、記事の言葉も少しずつ変わっていきました。

以前は「風通しがよい」「成長できる」といった表現で記事がまとまりやすかったのに対し、問いを変えた後は、「忙しい時期でも相談が途切れにくい」「任せたあとに振り返りの時間がある」「顧客との接点の中で自分の役割が見えやすい」といった、その会社らしい支え方や任せ方が言葉として残りやすくなりました。以前は「雰囲気のよさ」や「働きやすさ」への共感で止まりやすかったのに対し、問いの設計を変えたあとは、「どんな人にこの環境が合いやすいのか」「この会社では、どんな支え方や任せ方があるのか」といった、入社後を見据えた会話が生まれやすくなりました。記事を増やすことより、問いを変えることの方が、語りの質に効いたのです。

働く意味を掘り起こすには、インタビューを「採用広報のため」だけにしないことが大切である

インタビューを採用広報のためだけのものとして扱うと、どうしても外向きに整った言葉を集めようとしがちです。そうすると、実感よりも正解らしい答えが集まりやすくなります。

むしろ、働く意味を掘り起こすには、その人が自分の働き方や組織との関係を見つめ直せる場としてインタビューを設計することが大切です。よいインタビューは、記事の素材を集めるだけではなく、話し手自身の中にある意味を見つける場にもなります。

物語は、最初から用意されているものではありません。話す中で、自分でも気づいていなかった理由や感覚が見えてくることがあります。だからこそ、質問は確認のためではなく、発見のために置かれる必要があります。

採用広報で必要なのは、社員に会社の魅力を代弁してもらうことではありません。その人自身の実感の中から、その会社で働く意味がどこで立ち上がっているのかを見つけていくことです。

インタビュー設計を変えることは、採用で届く言葉を変えることにつながる

採用広報を強くしたいとき、記事の見せ方や表現の工夫に目が向きやすくなります。もちろん、それも大切です。ただ、その前に見直したいのは、何を聞いているかです。

問いが変われば、語りが変わります。語りが変われば、届く言葉が変わります。そして、届く言葉が変わると、候補者がその会社を理解する入口も変わります。

採用広報ではなく、働く意味を掘り起こすインタビュー設計とは、よいコメントを集めるための設計ではありません。その会社で働くことが、誰にとって、どんな前提の中で意味を持つのかを見つけるための設計です。

実際に、社員インタビューの問いを見直していくと、記事の見せ方を工夫する前に、その会社で働く意味の輪郭そのものが変わって見えてくることがあります。会社が言いたいことより先に、候補者が判断材料として受け取れる言葉の輪郭が見えてくることもあります。採用広報を強くするとは、発信量を増やすことだけではなく、働く意味が立ち上がる場面に触れられる問いを持つことでもあるのだと思います。

石村浩延

Written by

石村浩延

マーケティング・ファシリテーター

株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。

まずは、現状を整理するところから。

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