価値共創ユニットが機能しない会社が見落としていること
価値共創ユニットが機能しない原因は、連携不足そのものではなく、顧客価値を起点にした役割・判断基準・文脈の受け渡しが設計されていないことにあります。分業と連携をどう機能させるかを解説します。これは、「誰に、何を、どのように届けるのか」の全社共有と、商品企画・マーケ・開発・営業の連携を目的とプロセスでつなぐ考え方に沿っています。
価値共創ユニットとは、営業・商品企画・マーケティング・商品開発などが、顧客価値を起点に役割と判断基準を揃え、価値を見つけ、形にし、届けきるまでを前に進める実践単位です。土台にあるのは、「誰に、何を、どのように届けるのか」を全社で共有し、分業と連携を顧客価値の文脈でつなぎ直すことです。
参考記事:価値共創ユニットとは何か。分業と連携をつなぎ直し、顧客価値を前に進めるための考え方
それにもかかわらず、価値共創ユニットがうまく機能しない会社は少なくありません。
部門横断の会議はある。営業と商品企画、マーケティング、開発が集まる場もある。けれど、なぜか価値が前に進まない。話し合っているのに、顧客に届くかたちにならない。むしろ、誰の仕事なのかが曖昧になり、現場だけが疲弊していく。そんな状態が起きます。
営業、商品企画、マーケティング、商品開発。
顧客価値を前に進めるには、もはや一つの部門だけでは足りません。市場や顧客の課題をつかみ、提供価値を定義し、それをかたちにし、顧客に届く言葉や体験へ変えていく。その流れ全体を支えるには、部門をまたいだ実践が欠かせなくなっています。
ただ、価値共創ユニットを立ち上げても、思ったほど機能しない会社は少なくありません。関係者は集まっている。会議体もある。部門横断で動く必要性も共有されている。それなのに、価値が前に進まない。営業は顧客の目の前の要望を追い、商品企画は事業性や競争優位を考え、マーケティングは伝え方を整え、商品開発は品質や実現可能性を見ている。どの視点も必要なはずなのに、顧客に届く価値として一つに束ねられず、議論はいつの間にか各部門の論理へ引き戻されてしまう。
このとき、多くの会社は「もっと連携を増やせばいい」と考えます。
ですが、見落とされているのは連携の量ではありません。問題は、何を起点に連携するのかが揃っていないことです。
価値共創ユニットが機能しないのは、人が悪いからではありません。
顧客価値を起点に、役割・判断基準・文脈の受け渡しが設計されていないからです。
集まっていても、見ている文脈が違う
価値共創ユニットが機能しない会社では、部門は集まっていても、見ている文脈が違います。営業は顧客の目の前の要望を追い、商品企画は市場や競争環境、事業としての成立性を見ています。マーケティングは誰にどう伝えるかを考え、商品開発は品質・納期・実現可能性を見ています。
本来、この違いは必要なものです。
営業が持つ現場の声がなければ、顧客のニーズは見えません。
商品企画が持つ市場や戦略の視点がなければ、価値は設計できません。
マーケティングの視点がなければ、誰にどう伝えるべきかは定まりません。
商品開発の視点がなければ、価値は実際の体験や仕様として成立しません。
問題は、その違いを束ねる判断基準がないことです。
営業は「今、この顧客に応えたい」と考える。
商品企画は「そもそも誰に向けた価値として整理するのか」と考える。
マーケティングは「そのままでは伝わらない」と感じる。
商品開発は「その条件では品質も納期も守れない」と判断する。
それぞれの言っていることには一理あります。
だからこそ厄介なのです。間違っている人がいるのではなく、違う文脈のまま会話している。その状態で会議だけ増やしても、対話は前に進みません。
情報は流れていても、判断の助けになっていない
もう一つの見落としは、情報共有と価値共創を同じものとして扱ってしまうことです。
価値共創ユニットが機能しない会社では、情報自体は流れています。営業から現場の声が上がる。マーケティングから市場情報が共有される。商品企画からコンセプトが示される。
けれど、その情報が次の部門の判断を助けるかたちに翻訳されていないのです。
たとえば、営業の声が「顧客からこう言われた」という断片で止まれば、商品企画にとっては判断材料になりません。商品企画から出てくる整理が抽象的なコンセプトのままであれば、営業やマーケティングは具体的にどう提案し、どう伝えるべきかを掴めません。
必要なのは情報の受け渡しではなく、文脈の翻訳です。
何が起きているのか。
なぜそれが重要なのか。
その情報は、次の判断にどう効くのか。
ここまでつながって、はじめて価値共創は前に進みます。
「探索・創出・実現」の橋が設計されていない
価値共創は、ただ仲良く連携することではありません。
市場や顧客の課題をつかむニーズの探索があり、その課題に対する解決手段を設計する価値の創出があり、それを顧客に正しく届ける価値の実現があります。
ところが、機能しない会社は、この流れが途中で切れています。
顧客の声は拾っているのに、価値設計にまで届かない。
企画はあるのに、訴求にまで落ちてこない。
提案はしているのに、受注後の学びが次の企画や改善に戻らない。
その結果、「誰がやるか」ばかりが争点になります。
けれど本質は、誰がやるかより前に、どのフェーズで、何を、誰に渡すのかが設計されていないことにあります。
価値共創ユニットが機能しない会社は、部門連携そのものよりも、探索から創出、実現へと文脈をつなぐ設計を見落としているのです。
人の問題に見えて、実は構造の問題である
価値共創ユニットが機能しない会社ほど、この状態を人の問題にしてしまいます。
営業が協力的ではない。
商品企画が遅い。
開発が融通を利かせない。
マーケティングが現場を分かっていない。
ですが、こうした対立の多くは、個人の性格や姿勢よりも、構造の問題から生まれています。
どこで判断するのか。
誰が翻訳するのか。
何を次へ渡すのか。
何をもって前進とみなすのか。
これらが整理されていなければ、違う部門が違う論理で動くのは当然です。
人が悪いのではなく、前に進めるための構造がまだ設計されていないのです。
価値共創ユニットは、部門を増やす考え方ではない
価値共創ユニットは、部門横断の名前をつくることでも、会議体を増やすことでもありません。
顧客理解、価値設計、訴求、実装を分断させず、ひとつの文脈としてつなぎ直す考え方です。
必要なのは、連携の回数を増やすことではありません。
顧客価値を起点に判断基準を揃え、探索から創出、実現へと文脈を受け渡す設計をつくることです。
価値は、一人の頑張りでは前に進みません。
けれど、ただ集まるだけでも前に進みません。
違う役割を持つ人たちが、違うままでも前に進める状態をどう設計するか。
価値共創ユニットが機能するかどうかは、そこにかかっています。

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マーケティング・ファシリテーター
株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。
まずは、現状を整理するところから。
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