$og_type = 'article'; $og_image = !empty($article['eyecatch']['url']) ? $article['eyecatch']['url'] . '?w=1200&h=630&fit=crop' : ''; $og_published_time = $article['published_date'] ?? $article['publishedAt'] ?? ''; 採用しても定着しない会社が見落としている、ナラティブ採用の視点 | TRANSIT DESIGN INC.

採用しても定着しない会社が見落としている、ナラティブ採用の視点

採用はできているのに定着しない背景には、入社前の期待と入社後の実感のあいだにある文脈のずれがあります。採用と定着を別々に考えず、入社後にも意味が続く出会いをどう設計するか。ミスマッチや早期離職を防ぐための、ナラティブ採用の視点を整理します。

CONTEXT

採用に力を入れているのに、入社後の定着に課題が残る。応募は来る。選考も進む。ようやく採用できたと思っても、思っていたより早く離れてしまう。あるいは、辞めるまではいかなくても、どこか噛み合わないまま時間が過ぎていく。そんな状態に、説明のつかない手応えの薄さを感じている会社は少なくありません。

このとき、多くの会社では、採用と定着が別々の課題として扱われます。採用は人を集める話で、定着は入社後のフォローや制度の話。そう切り分けること自体はわかりやすいです。ただ、その分け方のままだと、なぜ採用の段階ではよさそうに見えた出会いが、入社後に少しずつずれていくのかが見えにくくなります。

採用と定着が分かれて見えやすいのは、役割や担当が分かれているだけでなく、採用は入口、定着は入社後という時間の切れ目で捉えられやすいからです。ただ、見落とされやすいのは、採用で語られたことと、入社後に触れる実感が、ひとつづきの文脈にあるということです。入社前に抱いた期待と、入社後に感じる日々の仕事の手触り。そのあいだに大きなずれがあれば、人は「合わなかった」と感じやすくなります。逆に、そのあいだの文脈がつながっていれば、多少の大変さがあっても、「ここで働く意味」を見失いにくくなります。

つまり、定着の問題は、入社後だけで起きているとは限りません。採用の時点で、どんな期待が生まれ、どんな実感につながるのかが、十分に言葉になっていないことがあります。だからこそ、定着まで含めて採用を考えるには、制度やフォロー体制を見るだけではなく、採用でどんな文脈を届けているのかを見直す必要があります。

私たちは、こうした採用のあり方をナラティブ採用と捉えています。条件や制度を並べるだけではなく、組織の中にある働く意味や現場の実感を掘り起こし、合う人に届く文脈へ変えていく考え方です。そして、この視点は採用の入口だけで完結するものではありません。入社後の定着まで含めて見てはじめて、その意味の輪郭が立ち上がってきます。

採用と定着を分けて考えると、ずれの原因が見えにくくなる

採用は採用担当、定着は現場や人事制度の担当。実務上、役割が分かれること自体は自然です。ただ、組織としての見立てまで分かれてしまうと、本質的な課題を見失いやすくなります。

たとえば、採用の場では「挑戦できる環境です」と伝えていたとします。しかし入社後、任されるだけで支えがなく、何が期待されているのかも見えにくい状態だったとしたら、本人にとってそれは「挑戦」ではなく「放置」として受け取られるかもしれません。

あるいは、「人を大切にする会社です」と語っていても、入社後に困ったときの相談先が曖昧で、忙しい場面ほど対話が減るような環境であれば、その言葉は現場の実感とつながりません。

ここで起きているのは、採用の失敗だけでも、定着施策の不足だけでもありません。採用で語られた言葉と、入社後に触れる実感のあいだで、文脈が切れているのです。採用と定着を別々に考えると、この断絶の所在が見えにくくなります。

定着とは、制度だけで決まるものではなく、意味が持続するかどうかでもある

定着というと、給与や福利厚生、オンボーディング、評価制度、面談頻度といった仕組みの話になりやすいです。もちろん、それらは重要です。働き続けるための土台として欠かせません。

ただ、人が残る理由は、それだけでは説明しきれません。

実際には、しんどい時期があっても、なぜここで働き続けようと思えたのか。思っていたものと違う場面があっても、なぜ関係を切らずにいられたのか。そこには、制度だけでは言い表せない実感があります。

たとえば、忙しい時期でも一人にしない関わり方があったこと。うまくいかないときにも、過程を見てくれる上司がいたこと。顧客に向き合う中で、自分の仕事が誰にどう届いているのかが見えてきたこと。そうした出来事の積み重ねによって、「ここで働く意味」は持続していきます。

つまり、定着とは、条件の満足度だけで決まるものではありません。働く意味が、入社後も立ち上がり続けるかどうかの問題でもあります。

採用で本当に伝えるべきなのは、入社後にもつながる実感である

採用広報では、どうしても入口としての魅力が重視されます。制度の整備、カルチャーのよさ、事業の将来性、仕事のやりがい。それ自体は必要です。ただ、入社後の定着まで見据えるなら、入口で伝えるべきことも少し変わってきます。

本当に必要なのは、入社後にもつながる実感を、採用の時点でどれだけ言語化できているかです。

たとえば、「成長できる環境」という言葉だけでは、入社後のイメージは人によってかなり違います。けれど、「任せるだけでなく、振り返りまで含めて支えてくれる」「顧客との接点の中で自分の役割が見えやすい」といった具体があれば、入社後の実感との接続が生まれやすくなります。

採用で必要なのは、会社が言いたいことを整えることだけではありません。入社したあとに、その人がどのような仕事の進め方や関係性の中で意味を感じやすいのか。その輪郭を、あらかじめ届く文脈へ変えておくことです。

「合う人を採る」とは、定着しやすい文脈で出会うということでもある

採用でよく語られるのが、「スキルがある人」より「合う人を採りたい」という言葉です。方向性としてはもっともです。ただ、この「合う」を曖昧なままにすると、採用でも定着でも判断がぶれやすくなります。

合う人とは、雰囲気が合う人ではありません。その会社の仕事の進め方や、支え方や、期待のされ方の中で、意味を見つけやすい人です。

どんな人が、この環境で力を発揮しやすいのか。どんな人は、入社後にずれを感じやすいのか。そこが言葉になっていないと、採用の場では「なんとなく感じがよい人」を選びやすくなりますし、入社後も「思っていたのと違った」が起こりやすくなります。

定着まで含めて考えるナラティブ採用の視点では、「合う人と出会う」とは、条件に合う人を集めることではありません。働く意味が立ち上がりやすい文脈の中で、出会い直すことです。

入社後のずれは、採用時点の期待の置き方から始まっていることがある

早期離職やオンボーディング不全が起きると、入社後の受け入れ体制だけに目が向きやすくなります。もちろん、それも大切です。ただ、ずれの起点はもっと手前にあることが少なくありません。

採用の場で、その会社のよい面だけが強く語られ、難しさや特徴的な前提があまり言葉になっていないと、候補者は自分に都合のよい期待を抱きやすくなります。そして入社後、その期待と異なる現実に触れたとき、「話が違った」という感覚が生まれます。

ここで大事なのは、ネガティブな情報を並べることではありません。その会社で働くことのリアルな輪郭を、採用時点から言葉にしておくことです。どんな人にはこの環境が合いやすいのか。どんな局面で大変さが出やすいのか。そのとき、どんな支え方があるのか。

それが見えていれば、候補者は「自分に合うかどうか」を判断しやすくなりますし、入社後に想像と違うことが起きても、その出来事を文脈の中で捉えやすくなります。

定着課題をきっかけに、採用で使う言葉の見直しが始まった

ある企業では、採用そのものは一定数できていました。選考も極端に弱いわけではなく、面接での印象も悪くありませんでした。ただ、入社後しばらくすると、違和感を抱える人が出てきました。早期離職に至るケースもあれば、残ってはいるものの、どこか馴染み切れないままの状態もありました。

話を聞いていくと、制度面に大きな欠陥があるわけではありませんでした。むしろ、オンボーディングや面談の機会は一定程度整っていました。ただ、採用の場で語られていた言葉と、入社後に感じる実感のあいだに、少しずつずれがありました。

たとえば、「裁量がある」という言葉は魅力として伝わっていましたが、実際には、自分で考えて動くことが前提になる場面が多く、それを支えるための対話や振り返りもセットで存在していました。しかし、その後半部分が採用の時点では十分に届いておらず、一部の入社者には「思ったより任され方が急だ」という印象になっていました。

そこで見直したのは、定着施策だけではなく、採用で使う言葉でした。現場のメンバーに、どんなときにこの会社らしさを感じるのか、しんどい時期に何が支えになったのか、働き続ける理由はどこで立ち上がっているのかを聞き直していくと、「裁量がある」という言葉の内側にある実感が見えてきました。任せるだけではなく、振り返りを通じて自分の役割を言語化してくれること。忙しい時期でも相談が途切れにくいこと。顧客の期待に応えるだけでなく、その背景を考えることが求められること。そうした具体を採用時点から言葉にし直したことで、面談の会話も変わっていきました。

以前は「裁量がある環境です」という魅力への共感で会話が止まりやすかったのに対し、見直し後は、「どこまで自分で考えることが求められるのか」「そのとき、どんな支え方があるのか」「自分はこういう任され方に意味を感じやすい」といった、入社後の働き方を前提にした対話が増えていきました。結果として、採用の見せ方だけでなく、入社後の受け止め方にも変化が出はじめました。採用の時点で文脈が届いていると、入社後に少し難しい局面があっても、「想定外の違和感」ではなく、「この会社ではこういう意味で任せているのだ」という理解につながりやすくなったのです。

定着まで含めて考える採用では、入社後の語りを採用に戻す必要がある

採用と定着をつなぐうえで重要なのは、入社後に起きていることを、採用の場に戻していくことです。

どんな人が、なぜ残っているのか。どんな人が、どこでずれやすいのか。しんどい時期があっても、なぜ働き続けようと思えたのか。そうした入社後の語りの中に、その会社で働く意味の輪郭があります。

採用を強くしたいとき、多くの会社は外向きの言葉を整えようとします。しかし、定着まで含めて考えるなら、先に見直したいのは、入社後の実感にどんな言葉が与えられているかです。その言葉を採用に戻していくことで、入口と入社後の文脈がつながりやすくなります。

ナラティブ採用は、採用広報のテクニックではありません。入社前と入社後を分けずに捉えながら、働く意味がどこで立ち上がるのかを見つけ、それを合う人に届く接点へ変えていく考え方です。

採用を強くするには、入社までではなく、入社後に意味が続くかまで見る必要がある

採用の成果を、応募数や採用人数だけで見ていると、入社後に起きているずれは見えにくくなります。けれど、本当に見たいのは、その出会いが働き続けることにつながっているかどうかです。

入社後の定着まで含めて考えるナラティブ採用の視点では、採用は入口ではありますが、それだけでは完結しません。採用で語られた言葉が、入社後の実感とつながっているか。働く意味が、入社後にも立ち上がり続けるか。そこまで含めて見てはじめて、採用の質が見えてきます。

実際に、入社後の実感を丁寧に掘り起こしていくと、採用で本当に届けるべき言葉は、制度の説明よりも、働く意味が立ち上がる場面の中にあることが見えてくることがあります。採用を強くするとは、人を集めることだけではなく、入社後にも意味が続く出会いを設計することでもあるのだと思います。

Written by

石村浩延

マーケティング・ファシリテーター

株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。

まずは、現状を整理するところから。

無料相談受付中。1〜2営業日以内にご連絡します。