$og_type = 'article'; $og_image = !empty($article['eyecatch']['url']) ? $article['eyecatch']['url'] . '?w=1200&h=630&fit=crop' : ''; $og_published_time = $article['published_date'] ?? $article['publishedAt'] ?? ''; 経営の言葉と現場の実感がずれている会社で、採用が弱くなる理由 | TRANSIT DESIGN INC.

経営の言葉と現場の実感がずれている会社で、採用が弱くなる理由

理念や採用メッセージを整えているのに、なぜ採用で届かないのか。経営の言葉と現場の実感がずれている会社で起きることを整理しながら、合う人に届く採用のために必要な文脈設計の視点を解説します。

CONTEXT

理念はある。採用ページも整えている。代表メッセージも、社員インタビューも載せている。それなのに、採用ではなかなか合う人と出会えない。候補者との面談では共感は得られているはずなのに、選考の途中で離脱される。入社しても、思っていたより早く辞めてしまう。そんな状態に、どこか説明のつかない違和感を抱えている会社は少なくありません。

このとき、多くの会社は「もっと伝え方を工夫しよう」と考えます。コピーを見直し、制度を整理し、社員の声を増やす。それ自体は必要です。ただ、それでも届かないのだとしたら、足りないのは発信量ではなく、言葉のつながり方なのかもしれません。

候補者が知りたいのは、理念が立派かどうかだけではありません。その言葉が、この会社の中でどのように生きているのかです。どんな場面でその価値観が立ち上がるのか。どんな仕事の進め方や支え方に、その会社らしさが表れているのか。そこが見えないままでは、どれだけ整った言葉を並べても、共感は生まれても判断材料にはなりにくくなります。

つまり、採用が弱くなる背景には、経営の言葉そのものの問題ではなく、経営の言葉と現場の実感のあいだにある文脈の断絶があることがあります。上では理念や方針が語られているのに、現場ではその意味が日々の仕事と十分につながっていない。あるいは、現場にはたしかに働く意味や手応えがあるのに、それが経営の言葉と結びつかず、外に届くかたちへ変わっていない。採用で届かなくなるのは、こうしたずれが放置されているときです。

私たちは、こうした採用のあり方をナラティブ採用と捉えています。条件や制度を並べるだけではなく、組織の中にある実感を掘り起こし、経営の言葉とつなぎ直しながら、合う人に届く文脈へ変えていく考え方です。

経営の言葉が間違っているのではなく、現場の実感とつながっていない

採用で使われるメッセージの多くは、経営の視点からつくられます。どんな未来を目指しているのか。何を大切にしているのか。どのような仲間を求めているのか。これらは組織の方向を示すうえで重要ですし、経営の言葉そのものが悪いわけではありません。

問題は、その言葉が現場の実感とつながっていないときです。

たとえば、「挑戦を歓迎する会社です」と言っていても、現場では失敗に対して過度に慎重になっているかもしれません。「チームで価値を生み出す」と掲げていても、実際には部門ごとに分断され、助けを求めにくい状態かもしれません。「顧客起点」を語っていても、現場では社内調整に追われ、顧客の声に触れる余白がないこともあります。

こうしたとき、経営の言葉が間違っているわけではなくても、候補者にとっては浮いて見えます。きれいなことは書いてある。けれど、どのような仕事の進め方の中で、その言葉が立ち上がっているのかが見えない。すると、その言葉は共感の対象にはなっても、判断材料にはなりにくくなります。

ずれはなぜ起きるのか。経営と現場では、見ている時間軸が違う

このずれは、誰かの認識が甘いから起きるわけではありません。むしろ、多くの組織で自然に起こりやすいものです。

経営は、組織の未来や目指す方向を語ります。これからどこへ向かうのか、何を大切にするのか、どのような会社でありたいのかを示す役割があります。一方で、現場は目の前の仕事や顧客対応、部門間の調整、人との関係性の中で日々を生きています。つまり、経営は未来を中心に言葉を持ちやすく、現場は現在の実感の中で意味を捉えやすいのです。

だからこそ、両者のあいだには、放っておくと時間軸のずれが生まれます。経営の言葉は正しくても抽象度が高くなりやすく、現場の実感は具体的でも組織全体の意味と結びつきにくい。このあいだをつなぐ工程がなければ、採用で語られる言葉もまた、未来の理想か、個別のエピソードかのどちらかに寄りやすくなります。

採用で必要なのは、このずれをなくすことではありません。未来を語る言葉と、日々の実感のあいだを行き来しながら、その会社で働く意味がどこで立ち上がっているのかを見つけ、届く文脈へ整えることです。

候補者が知りたいのは、理念の正しさではなく、仕事の中でどう生きているか

採用の場で候補者が見ているのは、理念が立派かどうかだけではありません。その言葉が、この会社の中でどのように生きているのかです。

たとえば、「人を大切にする会社」と書かれていたとして、候補者が本当に知りたいのは、忙しい時期にどんな支え方があるのか、うまくいかない時期にどのような関わり方がされるのか、役割が曖昧なときに誰がどのように整理してくれるのかといったことです。

つまり、候補者が見ているのは理念そのものではなく、その理念がどんな行動や関係性として表れているのかです。理念が現場の実感へ翻訳されていないと、どれほど正しい言葉でも、その会社らしい輪郭は立ち上がりません。

採用で必要なのは、経営の言葉を強く打ち出すことだけではありません。その言葉が、現場ではどのような仕事の進め方や支え方、判断のしかたとして存在しているのかを、届くかたちへ変えていくことです。

社員インタビューを増やしても響かないのは、文脈がつながっていないから

このずれは、社員インタビューにもよく表れます。採用広報として社員の声を載せているのに、なぜか響かない。読まれても、応募や納得感につながらない。そうしたケースは少なくありません。

その理由のひとつは、経営の言葉と現場の実感のあいだをつなぐ設計がないまま、個人のエピソードだけが並んでしまうからです。

たとえば、社員インタビューの中で「成長できる環境です」「人があたたかいです」「裁量があります」と語られていたとしても、それだけでは他社との違いは見えにくいものです。しかも、その言葉が経営の掲げる方向性とどうつながっているのかが見えなければ、単なる良い話として流れてしまいます。

本来、社員の語りは、経営の言葉を現場の実感に引き寄せるためのものです。ある価値観が、日々の仕事の中でどのようなかたちで表れているのか。どのような局面で、その会社らしさが立ち上がるのか。その文脈が見えてはじめて、社員の声は意味を持ちます。

インタビューを増やすこと自体が問題なのではありません。問題は、その語りをどう意味づけて言語化するかです。個人の経験を、組織の輪郭が伝わる文脈へつなぎ直せていないと、コンテンツは増えても採用は強くなりません。

採用が弱い会社では、社内で共有されている実感と、外に出ている言葉がずれている

さらに厄介なのは、社内ではなんとなく共有されていることが、外にはほとんど伝わっていない状態です。

組織の中にいる人たちは、「この会社のよさはこういうところだよね」と肌感覚でわかっていることがあります。しんどい時期に助けてくれる人がいる。顧客に向き合う姿勢がぶれない。任せ方にその会社らしさがある。そうした実感は、社内では共有されていることがあります。

ただ、それが言葉として整理されていないと、採用の場では抜け落ちます。すると、外に出ていくのは、一般化された理念や、どこかで見たことのある採用メッセージばかりになります。

ここで起きているのは、単なる表現不足ではありません。社内で生きている実感と、外に届けるための言葉のあいだに、翻訳の工程が欠けているのです。

採用を強くしたいなら、この翻訳機能が欠かせません。経営の言葉を疑うのでも、現場の声をそのまま出すのでもなく、そのあいだにある意味を丁寧にすくい上げ、誰に、何を、どのように届けるかを整える必要があります。

共感はされるのに、判断材料にならない会社で起きていたこと

ある企業では、採用ページに理念や代表メッセージ、社員インタビューを丁寧に掲載していました。目指す方向も、会社として大切にしたい価値観も、言葉としてはきちんと整理されていました。しかし、面談や選考の場では、候補者の反応にどこか浅さが残っていました。共感はされるものの、「自分がここで働く意味」までつながっていない状態です。

話を聞いていくと、経営の言葉に問題があるというより、現場の実感との接点が十分に見えていないことがわかってきました。現場のメンバーに「この会社らしさはどんな場面で感じるか」と尋ねても、最初は「人がいい」「挑戦できる」といった抽象的な言葉が返ってきます。そこで、「どんな場面でそう感じたのか」「しんどかった時期に、何が支えになったのか」「上司や周囲の関わり方で印象に残っていることは何か」と問いを深めていくと、少しずつ具体が見えてきました。

たとえば、難しい案件を抱えたときに、単に励ますのではなく、一緒に優先順位を整理してくれる上司がいたこと。挑戦を求めるだけでなく、任せたあとに放置せず、振り返りの時間をきちんと取っていたこと。顧客の要望に応えるだけでなく、その背景にある課題まで見ようとする姿勢が、チーム内でも共有されていたこと。そうした実感を整理していくと、「挑戦」「顧客起点」「人を大切にする」といった経営の言葉が、はじめて現場の手触りを持ちはじめました。

その後、採用で使う言葉も変わりました。理念を削るのではなく、その言葉が仕事の中でどのように生きているのかが見えるように整え直したことで、候補者の反応は変わっていきました。以前は理念やカルチャーへの共感で会話が止まりやすかったのに対し、整え直した後は、「この会社では、しんどい時期にどのような支え方があるのか」「自分はどんな役割の持ち方を求められるのか」といった、入社後を見据えた対話が増えていきました。応募数を大きく増やすというより、面談の段階での会話の深さや、相互理解の質が上がっていったのです。

ずれを埋めるには、経営の言葉を下ろすだけでも、現場の声を拾うだけでも足りない

この問題に向き合うとき、ありがちな誤解があります。ひとつは、経営の言葉をもっとわかりやすくすればよい、という考え方です。もうひとつは、現場のリアルな声をそのまま出せばよい、という考え方です。

どちらも一部は正しいのですが、それだけでは足りません。

経営の言葉をわかりやすくしても、現場の実感とつながっていなければ、やはり浮いたままです。逆に、現場の声をそのまま並べても、それが組織として何を大切にしているのかと結びついていなければ、断片的なエピソードで終わります。

必要なのは、そのあいだをつなぎ直すことです。経営が大切にしたいと考えていることが、現場ではどのような判断や関係性として表れているのか。現場で起きていることが、組織として何を意味しているのか。それを往復しながら言葉にしていくことで、はじめて採用に効くメッセージになります。

私たちがナラティブ採用と呼んでいるのは、まさにこの営みです。物語をきれいにつくることではなく、組織の中にすでにある実感を見つけ、それを意味のある文脈へ整えていくことです。

採用を強くするには、理念を飾るのではなく、実感とつなぎ直す

採用が弱くなる理由は、言葉がないからではありません。むしろ、多くの会社にはすでに言葉があります。理念も、ビジョンも、求める人物像も、社員の声もある。それでも届かないのは、それらがばらばらに存在していて、ひとつの文脈としてつながっていないからです。

候補者が知りたいのは、立派な言葉そのものではありません。その言葉が、この会社の中でどのように生きているのかです。経営の言葉と現場の実感がつながったとき、はじめてその会社らしい輪郭が立ち上がります。そして、その輪郭こそが、合う人に届く採用の土台になります。

採用を強くしたいとき、まず見直したいのは、言葉の派手さではありません。経営の言葉と現場の実感のあいだに、切れている文脈がないかどうかです。そこをつなぎ直すことができれば、採用メッセージはもっと整い、もっと届くものになっていきます。

実際に、経営の言葉と現場の実感のあいだを行き来しながら言葉を整えていくと、会社が伝えたいことより先に、候補者が判断材料として受け取りやすい輪郭が見えてくることがあります。採用で必要なのは、整った言葉を増やすことではなく、その会社で働く意味がどこで立ち上がっているのかを見つけ、それを届く文脈へ変えていくことなのだと思います。

石村浩延

Written by

石村浩延

マーケティング・ファシリテーター

株式会社トランジットデザイン代表。 マーケティング伴走、採用・組織のストーリー設計、コンテンツ企画・制作を通じて、企業や地域、組織の見えにくい価値を言語化し、伝わるかたちへ整えることを仕事にしている。事業や組織の背景にある文脈を読み解き、営業・採用・発信などの接点をつなぎながら、実行につながる構造をつくることを得意としている。

まずは、現状を整理するところから。

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